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観察記録 — 成長点の救出
2026.08.25

成長点が消えた
貯水葉を5枚剥がして救出

貯水葉が成長点の上まで被さって、外からは成長点がまったく見えなくなった株がありました。メスで5枚外して救出したところ、埋もれた層から先には根が1本もありませんでした。

貯水葉が丸く膨らんで、成長点のあるあたりを塞いでいる株を横から見た写真

どうも、ジサクボです。上から見ても成長点が見当たらない株が、うちに1つありました。貯水葉が丸く膨らんで、成長点のあるあたりを塞いでいます。株自体は元気そうだったので、メスで貯水葉を1枚ずつ外して、成長点を出すことにしました。

  • 上から見ても成長点が見当たらない株を持っている人
  • 貯水葉を切って外していいのか迷っている人
  • 貯水葉と根がどうつながっているのか知りたい人
Prologue はじめに

貯水葉を5枚外して、成長点を救出しました

貯水葉が成長点の上にまで被さってしまい、外からは成長点がまったく見えなくなった株が、私の家にありました。メスで貯水葉を5枚外して、成長点を救出しました。

この記事では、その過程と、剥がして初めて見えた株の中の様子(根の張り方と貯水葉の変化)を、写真付きで書いていきます。


01
Chapter One 発端

成長点が、どこにも見えない

問題の株は P.willinckii Winnieです。上から見ると、こういう状態でした。

貯水葉が成長点を覆い、胞子葉だけが出ている状態を真上から

本来なら株の中心に見えるはずの成長点が、貯水葉に覆われてどこにもありません。外に出ているのは胞子葉だけです。

貯水葉が丸く膨らんで成長点を覆っている様子を横から

横から見ると、貯水葉が丸く膨らんで、成長点のあるあたりを塞いでいるのが分かります。株自体は元気そうなので成長点はまだ無事だと思います。ここから、貯水葉を1枚ずつ剥がして成長点を出していきます。


02
Chapter Two 作業

メスで貯水葉を1枚ずつ外していく

使ったのは解剖用のメスです。カッターではなくメスにしたのは、先端が尖っていて細かい作業ができるのと、切れ味がいいからです。貯水葉の中には葉脈というか、繊維のようなものが通っています。メスだとそこもスパッと切れるので、株に余分な負担をかけずに済みます。葉柄の部分(貯水葉の付け根)に刃を入れて、1枚ずつ切り離していきました。

1枚外したところ。次の貯水葉の中心部が変色している

1枚外すと、下から次の貯水葉が現れます。中心部が茶色く変色していました。

さらに外すと枯れた貯水葉が現れた

さらに外していくと、完全に枯れて茶色になった層が出てきます。外側は緑でも、内側はこうなっていました。結局、成長点が見えるまでに外した貯水葉は5枚です。


03
Chapter Three 発見

成長点は生きていました

5枚目を外したところで、成長点が出てきました。

貯水葉の下から現れた成長点と押さえ込まれていた胞子葉

成長点は健康な白色でした。ただ、貯水葉に押し付けられて、板に対してほぼ真上を向いています。そこから胞子葉が3枚出ていましたが、どれも貯水葉に押さえ込まれて窮屈な状態です。ビカクシダは一般的に、胞子葉は1枚ずつ順に成長していくものという印象がありますが、この3枚は成長が止まったまま、どれも同じような大きさで留まっていました。

成長点を真上から。根は成長点のすぐ周りの狭い範囲だけ

根は成長点のすぐ周りだけで、狭い範囲にしか張っていません。よく見ると、その中には新しい根も混ざっていました。

成長点まわりの全体。芽と根塊と胞子葉の位置関係

少し引いて見るとこうなっています。枯れた古い層の上に、成長点と根の塊。外に出ていた胞子葉は、そのすぐ隣から立ち上がっていました。

もう少し発見が遅れていたら、成長点ごと駄目になっていたかもしれません。毎日の観察が大事です。


04
Chapter Four 観察

外した5枚を並べて分かった2つのこと

外した5枚を、外した順に①〜⑤の番号を振って並べてみました。①が一番外側、つまり一番新しい世代で、⑤が一番古い世代です。

外した5枚の貯水葉。①が最新世代で一番小さい

同じ5枚の裏面。根が1本も付いていない

この写真から分かったことが2つあります。

新しい世代ほど、貯水葉が小さくなっていた

⑤から①へ、つまり古い世代から新しい世代に向かって、貯水葉がどんどん小さくなっています。成長点が覆われて以降、株の勢いが世代ごとに落ちていったように見えます。

5枚とも、根が1本も付いていなかった

もう1つが根です。ビカクシダは、成長点から出た根を貯水葉と貯水葉の間に這わせて、根の領域を広げていく植物です。このあたりの理屈は以前 貯水葉がうまく展開しない時の対処法 に書きました。だから、貯水葉の間に根がまったく無いというのは、普通なら考えにくいことです。

ところが今回外した5枚には、根が1本も付いていませんでした。裏面がきれいなままです。一方で、成長点が埋もれる前にできた古い層には根が張っていました。

つまりこの株では、成長点が埋もれた層を境に、それより後にできた貯水葉の間には根がまったく伸びていませんでした。どうしてこうなったのか。私の考えは6章でまとめます。


05
Chapter Five 推定

埋もれていた期間は、おそらく5〜6ヶ月

成長点がいつから埋もれていたのかは、外した貯水葉から逆算できます。

埋もれてから出た貯水葉が5枚。そして株は、すでに胞子葉のターンに移っていました。私の環境での成長ペースに当てはめると、成長点はおそらく5〜6ヶ月は埋もれていた計算になります。それだけの間、埋もれながらも成長点は胞子葉を出しつつ、耐えていたわけです。なかなか丈夫ですね。


06
Chapter Six 考察

私が考えていること

覆われたことで、2つのことが並行して起きていたと考えています。

根の出口が、埋もれた層に固定された

根の出口は成長点の側面にあって、貯水葉と貯水葉の間に位置していないと、根は出られません。覆われて以降、出口は埋もれた層に固定されたままでした。一度こうなると、人の手が入らない限り元には戻りません。上に重なっていった5枚のすき間には、出口が一度も面していない。だから、あの5枚の間には根が1本も無かったのだと考えています。逆に、埋もれた層には出口が面していたので、そこにだけ根があって、新しい根も混ざっていました。

葉と根が、連動して細っていった

根と葉の成長は、相互にリンクしていると私は思っています。

成長点から出てきた新しい葉は、被さった貯水葉に押さえ込まれて、物理的に成長できませんでした。同じ大きさのまま止まっていた3枚の胞子葉が、その状態です。葉が成長できないと、根も伸びられない。埋もれた層に出た根が狭い範囲に留まっていたのは、そのためだと考えています。

そして根が止まれば、葉はさらに小さくなります。小さい葉では作れる養分が減って、根に回せる分も減る。外した5枚が⑤から①へどんどん小さくなっていたのは、この行き来が5〜6ヶ月回り続けた跡だと見ています。

もちろん、1株を解剖して見ただけの話です。


07
Chapter Seven 対処

同じ状態の株に気づいたら

上から見て成長点が見当たらず、外に出ているのが胞子葉だけ。そういう株がいたら、成長点が貯水葉の下に埋もれているかもしれません。私の株では覆われている間も貯水葉が小さくなり続けていたので、気づくのは早いに越したことはないと感じています。

剥がす場合は、葉柄の部分に刃を入れて1枚ずつ、成長点が見えたところで止める。私はこの手順でやりました。

なお、貯水葉を切って外す作業には、株を傷めるリスクがあります。この記事は私の室内栽培環境での一例なので、実際にやる場合は株の状態をよく見て、自己責任でお願いします。


08
Chapter Eight 道具

今回使った道具

今回の作業で使ったのは、フェザーの替刃式のメスです。ハンドル(柄)に刃を付け替えて使うタイプで、私はNo.11の尖った刃を付けています。貯水葉の葉柄は意外と硬いのですが、メスは切れ味が良く、狙ったところに刃を入れられるので、この作業にはとても重宝しました。柄と刃は別売りなので、両方あげておきます。

フェザー 替刃メス ハンドルNo.3

フェザー 替刃メス ハンドルNo.3

刃先を付け替えられる替刃式のメスの柄です。貯水葉の葉柄を狙って切る作業に重宝しました。刃は付いていないので、下の替刃と合わせて買う形になります。

フェザー メス替え刃 #11

フェザー メス替え刃 #11

ハンドルNo.3に付ける替刃です。刃の長さは19mmで、先が尖った形をしています。1枚から買えるので、まず試してみるならこれで足ります。


09
Chapter Nine 結び

まとめ

  • 貯水葉が成長点を完全に覆ってしまった P.willinckii Winnie から、メスで貯水葉を5枚外しました
  • 成長点は健康な白色でした。押さえ込まれた胞子葉が3枚、同じような大きさのまま止まっていました
  • 外した5枚は新しい世代ほど小さく、裏には根が1本も付いていませんでした。根は成長点の周りの狭い範囲だけで、新しい根も混ざっていました
  • 貯水葉の枚数と胞子葉ターンへの移行から逆算すると、埋もれていた期間はおそらく5〜6ヶ月です
  • 新しい貯水葉のすき間には根の出口が面しておらず、根は出られなかったのだと考えています
  • 葉が押さえ込まれて成長できないと根も伸びられず、根と葉が連動して細っていったように見えます

この株がこの後どう回復していくかは、また記事にする予定です。