葉からは水が逃げていきます。蒸散(じょうさん)と呼ばれるものです。空気が乾いているほど、逃げる量は多くなります。
葉が大きいため、乾燥した場所で管理すると葉の蒸散量が多くなり、胞子葉や貯水葉の先端が萎縮したりするので注意。
— NHK趣味の園芸『ビカクシダ』品種図鑑、アンゴレンセ(P.elephantotis)の項より
一方で、根が少ない株は吸える量が少ない。小株や、親株から取ったばかりの子株がそうです。
出ていく量が、入ってくる量を超える。こうなると株は萎れます。
似た状況を、トマトの接ぎ木で調べた研究がありました。接いだばかりの上側は、まだ下から水をもらえません。その状態のものと、水を吸える状態にしたものを並べて比べています。
水を吸える側は、空気が乾いて蒸散が増えても萎れませんでした。吸えない側は、蒸散を止めきれずに萎れています。
そして、苗のまわりの湿度を高めて蒸散を抑えることは、萎れを防ぐうえで「きわめて有効な方法」だとまとめられていました(信岡尚・小田雅行・佐々木英和 1996、園芸学会雑誌 64(4): 859-865)。
密閉して湿度を上げるのは、この水の出口を塞ぐためだと私は考えています。本にも、根を傷めた子株への手当てとして書かれています。
根を切って傷めているので、子株を苗として育てるときは、古い葉を切って葉数を減らして蒸散を抑え、根の負担を減らす。 小さい苗は密閉容器に入れ、湿度を高めると蒸散が抑えられ、簡単に管理できる。
— NHK趣味の園芸『ビカクシダ』p.75(子株とりの手順より)
葉を減らすのと、密閉して湿度を上げるのが、並んで書かれています。葉の枚数が減れば、出口そのものが減ります。密閉のほうは、空気を湿らせて出ていきにくくする。やり方は違っても、どちらも水の出口を塞ぐ手だと読めます。
タイの本にある Wanida Burin さんの方法も、根の不調や環境の変化で弱った株を水苔で植え直し、密閉して、根が強くなるのを待つものです。
Burin shared a tip on rescuing a weakened fern, which can be caused by root issues or environmental changes. She replanted it with sphagnum moss and put it in a closed container to control humidity, keeping it in a cool and shaded spot. Once the roots have strengthened, the fern will produce new fronds.
(弱った株を助ける方法。原因は根の不調や環境の変化。水苔で植え直してから密閉容器に入れて湿度を管理し、涼しい日陰に置く。根が強くなれば新しい葉を出す)
— Patra Sangdanuch『PLATYCERIUM』p.172、Wanida Burin さんの方法
この方法には「涼しい日陰に置く」も入っています。さきほどのトマトの研究にも、こう書かれていました。
接ぎ木苗の養生環境を高い相対湿度に保った場合でも、強光が当たると苗の萎凋を防止できない
— 信岡尚・小田雅行・佐々木英和(1996)園芸学会雑誌 64(4)
理由も書かれていました。光には熱が含まれているので、当たると葉の温度が上がる。湿度を高くした中でも、光が強いほど蒸散が多くなっていました。湿度を上げて出口を塞いでも、光が強ければまた水が出ていく。密閉するなら、光も落としておいたほうがよさそうです。
萎れる仕組み①。根が少なくて吸える水が少ないところに、空気の乾きや強い光で葉から出る水が増えると、出ていく水が入ってくる水を上回って萎れる
私が密閉でやるのも、小株や、まだ根が短い株です。