ビカクシダの学名は、半分が人の名前でできている
ビカクシダの学名をいくつか並べてみます。P. veitchii(ベイチー)、P. willinckii(ウィリンキー)、P. wallichii(ワリチー、ワリッキー)、P. ridleyi(リドレイ)、P. holttumii(ホルタミー)、P. wandae(ワンダエ)。
語尾を見ると、-ii、-i、-ae で終わっているものが結構あります。これ実は、ラテン語の 「○○の」 という意味の語尾なんです。日本語に直すと「〜の」、英語の of 〜 とか 〜's にあたります。
つまり、veitchii = 「ヴィーチの」、wandae = 「ワンダの」、ridleyi = 「リドレイの」。これが分かると、種小名を見るだけで 「人の名前から作られた品種かどうか」が見分けられる ようになります。-ii、-i は男性名から、-ae は女性名から作られた語尾。植物学の世界では、新種を記載した学者が、その植物の発見者や恩師、自分にとって大事な人物の名前を種小名に残す習慣が昔からありました。
そう思って改めて18種類の学名を眺めてみると、面白いことに気づきます。18種のうちちょうど半分、8種が人物にちなんだ名前。残りの10種は地名(madagascariense、andinum)や形(coronarium、elephantotis)に由来する名前でした。
この記事では、その「人物にちなんだ8種」を1人ずつ紹介していきます。植物ハンター、植物園の園長、デンマーク人外科医、宣教師、早世した妹。19世紀末から20世紀初頭にかけて世界中で活動していた人たちの名前が、150年経った今でも、私たちが「ベイチー」「ウィリンキー」「ワンダエ」として日常的に口にする品種名になっています。
なお、できる限り 学名が記載された当時の原典(19世紀末〜20世紀初頭の英国・ポーランド園芸書) までさかのぼって確認しました。原典まで直接読めたのは8種のうち4種で、残り4種は信頼度の高い二次資料です。各人物の項目に 確証度 を付けておきます。